<ACCI Gusto 2021 日本ナポリピッツァ職人協会 デモンストレーション>
コロナ禍でもニーズを伸ばしたひと味違うナポリピッツァを提案

日本ナポリピッツァ職人協会のシェフたちは、毎回「ACCI Gusto」に参加して、おいしく楽しいデモンストレーションを展開しています。特に今回の「コロナ禍でもテイクアウトやデリバリーによって売り上げをキープできた」という話は、飲食業界の低迷を嘆く参加者たちを元気づけてくれました。

今回デモンストレーションを担当した宮本沙矢香さん、大西誠さん、大坪善久さんは、三者三様の個性的なピッツァを披露。コロナウイルスの影響で、イートインのゲストが減少したのは3人のお店も例外ではありませんでしたが、各店の特長やゲストたちの好みなどを優先したテイクアウトメニューで、コロナ禍でも売り上げを伸ばすことができたそうです。今回紹介してくれるのは、そんななか、特に人気だったピッツァです。

自慢のピッツァ作りに使用しているのは、カプート社の小麦(モンテ物産)、タカナシの北海道純正生クリーム、イタリア産アカシアの有機ハチミツ(日仏貿易)など。

「うちの店では、以前からドリンクといえばお酒を注文するお客様が多かったので、それでデリバリーのピッツァもお酒に合うタイプに力を入れることにしました」と言うのは、宮本沙矢香さん。それがアンチョビの塩味とトマトの酸味がお酒と相性のよい「ピッツァ パッキーノ」です。コロナ前から人気のメニューでしたが、コロナ禍のテイクアウトで初めてこの味と出会って以来、常連さんになってくれたという人も少なくありません。さらに、「ピッツァと一緒にお酒もテイクアウトできるようにしたら、一層、売り上げが伸びた」ということです。

宮本 沙矢香さん。2018年に開催された「第1回ポンティコルヴォ杯(女性ピッツァ職人コンテスト)」で見事優勝。現在は杉並区高円寺にある「ピッツェリアSOL」を夫婦で営む。

「もともとピッツァは、テイクアウトやデリバリーで親しまれてきた食べ物ですから、お客様のニーズに合ったメニューを充実させれば、コロナ禍でも何とかなると考えて、結果、乗り越えることができたんですね」(宮本さん)

「ピッツァ パッキーノ」
チーズベースでチェリートマトをふんだんに使ったピッツァ。ニンニクの香りとアンチョビの塩味が酒のつまみにもピッタリの「ピッツェリアSOL」一番の人気メニュー。

次に大西誠さんが紹介してくれたのが、「ピッツァ クアトロフォルマッジ」。これは4種のチーズを用いたピッツァで、大西さんこだわりのポイントは、ベシャメルソースを使うことです。

大西 誠さん。2003年、世界最高峰のピッツァの祭典において、初めてイタリア人以外で最優秀賞を受賞。12年には「日本ナポリピッツァ職人協会」を設立して初代会長に就任。現在、「PIZZA SALVATORE CUOMO」のプリモピッツァイオーロを務める。
大西さんは4種のチーズに、ゴルゴンゾーラ、ミモレット、モッツァレラ、タレッジョを選択。

「チーズをトッピングする前に、生地にベシャメルソースをぬります。こうすることでやさしくまろやかな風味になり、冷えてもチーズのやわらかな食感が保たれるのです」(大西さん・以下同)
この「クアトロフォルマッジ」にはさらなる工夫があって、それは焼き上げた後、ロール状に巻いて、BIOのハチミツを添えたことだ。
「もちろん、焼き上げたままの状態で提供するのもいいのですが、ロール状のピッツァは見た目や食感に変化が出て面白い。ハチミツは味の変化を楽しんでもらうために添えました」

「ピッツァ クアトロフォルマッジ」

個性的な味わいで、ピッツァの可能性を示してくれたデモンストレーション。最後に登場した大坪善久さんは、揚げピッツァのおいしさと食感の楽しさで参加さを唸らせました。
実は大坪さんのお店では、コロッケや揚げピッツァなどの揚げ物に力を入れようと、コロナ前から二層式の大きなフライヤーの導入を計画していたそうです。
「揚げ物については本格的な味を家庭で出すのは難しいし、また大量の油を使うので後片付けなどの手間も大変。だからそうした料理を中心に提供したらお客様に喜ばれるに違いないと――。そんな中、コロナになってしまいましたが、おかげさまで、揚げ物のテイクアウトやデリバリーの人気は上々です」(大坪さん)

大坪 善久さん。27歳の時に単身渡伊。カンパニア州のナポリやカラブリア州などで3年間、ピッツァ職人としての腕を磨いた。2010年、中央区日本橋に「ピッツェリア イル タンブレッロ」をオープン。
「PIZZA FRITTA ~揚げピッツァ~」

ミラノではピッツァがストリートフードとして、チェーン店のファストフードよりずっと安価で売られています。「コロナ禍でイタリア旅行というわけにはいかないので、せめて本格的なピッツァでイタリアを感じてほしいという思いも込めました」と大坪さん。
コロナウイルスに屈することなく、ピッツァの魅力を明るくピーアールする3人の強い精神力と豊かな発想力に感心した参加者は多かったことでしょう。終了後も、生地の配合やソース作りに関する多くの質問が寄せられていました。

ナポリピッツァ生地

材料

水3L練り分量 300g×約27玉  ( ) 内は水1L練り分量
水 ・・・ 3L (1L)
海塩 ・・・ 135g (45g)
CAPUTO酵母(ドライイースト) ・・・ 2.4g (0.8g)
CAPUTOサッコロッソ ・・・ 4950g (1650g)


作り方

1. ミキサーに水を入れ、塩を溶かす。
2. 塩が溶けたら、粉を1/3量入れてミキサーを回す。
3. 粉と水が混ざり、ドロドロの状態になったら、ドライイーストをまんべんなく入れ、再びミキサーを回す。
4. 混ざりきったら、1割残して残りの粉を投入する。生地の状態を見て残りの粉で調整する。
5. 1 玉300gに分割・成形し、番重に並べて12時間以上常温でおく。

ピッツァ パッキーノ

材料(1枚)

ナポリピッツァ生地 ・・・ 200g
チェリートマト ・・・ 60g
モッツァレラチーズ ・・・ 120g
アンチョビ ・・・ 10g
ニンニク ・・・ 4g
バジル ・・・ 5~6枚
オレガノ ・・・ 少々
グラナパダーノ ・・・ 3g
EVオリーブオイル ・・・ 15cc


作り方

1. ピッツァ生地を伸ばす。
2. 具材をトッピングし、グラナパダーノ、EVオリーブオイルをかけて窯で焼く。

ピッツァ クアトロフォルマッジ

材料(1枚)

ナポリピッツァ生地 ・・・ 200g
ベシャメルソース ・・・ 60g
ゴルゴンゾーラ ・・・ 15g
2種のチーズ ・・・ 30g
モッツァレラチーズ ・・・ 40g
グラナパダーノ ・・・ 6g
EVオリーブオイル ・・・ 6g
(お好みで)BIOはちみつ


作り方

1. ピッツァ生地を伸ばす。
2. ベシャメルソースを塗る。
3. 4種類のチーズをトッピングする。
4. グラナパダーノ、EVオリーブオイルをかけて窯で焼く。

PIZZA FRITTA ~揚げピッツァ~

材料(1枚)

ナポリピッツァ生地 ・・・ 80g
リコッタチーズ ・・・ 40g
モッツァレラチーズ ・・・ 15g
トマトソース ・・・ 15g
バジリコ ・・・ 1枚
サラミ ・・・ 10g
黒コショウ ・・・ 少々
油 ・・・ 適量


作り方

1. 生地を伸ばして円形にする。この時に薄くしすぎない。
2. リコッタチーズを塗り、黒コショウをふる。モッツアレラ、サラミ、トマトソース、バジリコの順で具材をのせる。
3. 具材をのせたら円形のピッツァを半分に折り、生地の縁をしっかり叩く。その後、引っ張る感じで生地を伸ばす。
4. 180℃から200℃の油で揚げる。生地の両隅を持って、中央から油に入れたらすぐにひっくり返し油をすくって生地にかけながら火入れをする。(全体がきれいな黄金色になったら)しっかり油をきって、少し休ませてから提供。